「ああ、行き過ぎたエロやグロを子供に見せないために、売り場をわけるだけでしょう? なぜ反対するの?」という方も多いでしょう。
でも、規制されるのは性表現だけではないのです。法律に反することを表現することが、すべて規制されてしまうのです。
この条例の問題点に関してはちょっとググればすぐわかりますし、たくさんの方が反対しておられるので、もう詳しくは書きません。自分の目で、耳で、頭で知って欲しいのです。
私はここで、条例が通ったあと、私の周りがどうなるかを考えてみたいと思います。
まず、過去の作品では『後宮』や『回転銀河』第13話「雨」(未成年との性交渉が描かれているため)なんかが引っかかるでしょう。
『後宮』は原作の『とはずがたり』が図書館で誰でも読めますが、小説はいいけど漫画(やアニメ)はダメなのです。「小説は読む人によって様々な理解がある。その点、漫画やアニメは誰が読んでも同じで一つの理解しかできないから」(東京都青少年・治安対策本部の浅川参事)だそうです。
「なんでもかんでも性表現がアウトってことにはならないでしょう?」という意見もあるでしょう。
でも、条例から外れた図書かどうかの審査も、都議会議員が仕事の合間に、会場に並べられたものをパラパラっと見てアウトかセーフか決めていると、議員が自ら言っているのです。その程度の審査なのです。
さらに、怖いのはここからです。
私は、今連載中の『小煌女』をラストを決めて、そこに向けて物語を構成し、描いています。しかし、その中には、もしかしたら法律に反すること、殺人や不法侵入、暴力、テロ、などの表現が含まれるかもしれません。
不法行為でも、不当に賛美しなければ大丈夫?
でも、主人公が正義で対するものは悪、と言い切れるでしょうか。
ものの見方は角度によって変わります。時には、悪の方が正義で主人公が悪だった、という場合もあるし、そういう名作もたくさんあります。
何が正しくて何がいけないかは、主観によって様々に変わるのです。
この条例は基準が曖昧でどうとでも解釈できる危険なものです。さらに困ったことに、規制は役人のその場の気分次第というのが現状です。
そして、もし規制が厳しければ、担当さんはこう言うでしょう。
「この展開だと、都条例に引っかかる“かもしれない”から、変えませんか」
出版社というのは、皆さんの想像以上に自主規制が厳しいメディアです。
例えば、「ひとでなし」や「お百姓さん」なんて言葉も差別用語なので使えません。お百姓さんをどんなにリスペクトしていてもだめです。
私も、デビュー作で「土建屋さん」と書いたら直されました。関西では「土建屋よしゆき」というタレントさんもいるのですが、出版社はテレビ以上に規制が厳しいのです。
時には、過剰とも思える自主規制もあります。何か事件があれば、それに関して過剰に畏縮して規制することもあり、いくらなんでもそれは、と思うこともあります。
それでも、日本は諸外国に比べれば、とても自由に美しいもの、醜いもの、正しいもの、間違っているもの、曖昧なものを描ける、多様性を認める国なのです。
けれど、出版社も商売です。違う売り場に置かれたら売れるものも売れなくなってしまう。規制が厳しくなったら、確実に普通の売り場に置けるようなものを求めるでしょう。
もちろん、反骨心のある雑誌や作家もいるでしょう。でも、「こういう話が描きたいけど、出版社にだめと言われる“かもしれない”から、やめよう」という作家も多いでしょう。誰だって、たくさんの人に読んでもらいたいのです。
私が描きたかった『小煌女』も、もしかしたら描けなくなるかもしれません。
確かに、こんなの子供に読ませてはいけないというようなものが普通に売られているのはわけるべきでしょう。表現の自由だからなんでもかんでもOKにしろとは思いません。
でも、今回の法律は、実はそういうものではないのが恐ろしいのです。そして、それに気付いていない人達が多いのが苦しいし悲しいのです。
東京都だけがめちゃくちゃなんやん、出版社が大阪に来てくれたらいいのに、なーんて思いますが、実際問題、そんなに簡単にすべてのシステムが迅速に移るなんてことできませんよね。
なので、これは東京都だけの問題ではないのです。
たとえ可決しても、都民の有権者20万人の署名で撤回は可能です。
どうか、皆さんが関心を持ち、誤解を解き、働きかけ(都民の知り合いの1人もいませんか?)、この条例が施行される事態になりませんように。
見せたくないものが、見せたくない人達から遠ざけられますように。
そして、美しいものも醜悪なものも、決して現実にあってはならないような恐ろしいことも、表現する上では許される世の中でありますように。
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先生のブログなどを見るまで、ここまでひどいものだとは知りませんでした。
お偉いさん方は、これをやる前になにかもっと他にやることはないのかと思います。
「マンガは読んでも同じで1つの理解しかない」なんてこと、絶対にないと思うのに。
その人たちは、マンガ読んだことないんでしょうか。
悲しくなりますね。
都民の知り合いに声をかけてみます。
「こんなこともあったね」と笑って話せることが出来ますように…。
自分には都民の知り合いがおりませんので、何とも出来ないことが悔しいです。
これだけの問題を抱えた改正案にもかかわらず、過激な性描写のみが対象とされていると思っている人の多いことに愕然としました。
現行の条例ではどのような問題点があって、どのようなデータを基にしてこの改正案が出されているのか全く不明です。
個人の感情と偏見のみで、出版業界に関わる方との話し合いもせず、漫画家を卑しい職業とまで言い放った都知事には呆れました。
心から、理不尽な条例が施行されないことを願っています。
何でも単純にマンガ(等)のせいにしないでほしいです。
表現の自由を認めたうえで、正しく規制してほしいです。
■反対派の議員さんに支持のメールを送る(12/14 正午まで)
http://www15.atpages.jp/~kageyanma/hiji/index.html
■出版社にメールを送って応援する(12/13までが勝負)
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/
私も以前議員さんにメールするなど
この条例の反対を訴えていました。
この条例は表現の自由を奪うものですよね。
私も漫画は日本が誇る芸術だと思っています。
小説はよくて漫画はダメだなんて納得できません。
私もまたメールさせてもらおうと思います。
都民ではないので、何もできないのかと思ってたら
↑できることがあるのですね。
子どもの頃から漫画を読んで育ってきた私ですが
ちゃんと良い悪いはわかります。
全てがそのせいではないんですよね。。。
残念なことです。
私も少し前まで都民でしたが今は違うから…と現状をよく知ろうとしていませんでした。
多くの諸外国の方が秋葉原に観光に来ている現状はどうするつもりなのでしょうか。
映画とは違い年齢制限を設けたとしても兄姉が居れば簡単に読めてしまうし、確かに過激な内容が悪影響な場合もあるでしょう。
しかしそれを抑制し注意するのは親や教師の役目だし、考え選ぶのは本人だと思います。
漫画の登場人物の行動やセリフに影響を受け、励まされ、救われた人の数の方が計り知れないはずなのになあ…。
桃太郎はヒーローという事になっていますが、鬼からしてみれば一族を抹消し金品まで奪った大悪党ですし何事も一面だけ見て判断してはいけないという事ですね。