2010年12月10日

海野つなみは、東京都の青少年育成条例に反対します。

12/15日は、私の親友・まきこちゃんの誕生日です。そして、今年のこの日、都議会で東京都青少年育成条例が、ほぼ可決される見通しです。
「ああ、行き過ぎたエロやグロを子供に見せないために、売り場をわけるだけでしょう? なぜ反対するの?」という方も多いでしょう。
でも、規制されるのは性表現だけではないのです。法律に反することを表現することが、すべて規制されてしまうのです。
この条例の問題点に関してはちょっとググればすぐわかりますし、たくさんの方が反対しておられるので、もう詳しくは書きません。自分の目で、耳で、頭で知って欲しいのです。
私はここで、条例が通ったあと、私の周りがどうなるかを考えてみたいと思います。

まず、過去の作品では『後宮』や『回転銀河』第13話「雨」(未成年との性交渉が描かれているため)なんかが引っかかるでしょう。
『後宮』は原作の『とはずがたり』が図書館で誰でも読めますが、小説はいいけど漫画(やアニメ)はダメなのです。「小説は読む人によって様々な理解がある。その点、漫画やアニメは誰が読んでも同じで一つの理解しかできないから」(東京都青少年・治安対策本部の浅川参事)だそうです。
「なんでもかんでも性表現がアウトってことにはならないでしょう?」という意見もあるでしょう。
でも、条例から外れた図書かどうかの審査も、都議会議員が仕事の合間に、会場に並べられたものをパラパラっと見てアウトかセーフか決めていると、議員が自ら言っているのです。その程度の審査なのです。

さらに、怖いのはここからです。
私は、今連載中の『小煌女』をラストを決めて、そこに向けて物語を構成し、描いています。しかし、その中には、もしかしたら法律に反すること、殺人や不法侵入、暴力、テロ、などの表現が含まれるかもしれません。
不法行為でも、不当に賛美しなければ大丈夫?
でも、主人公が正義で対するものは悪、と言い切れるでしょうか。
ものの見方は角度によって変わります。時には、悪の方が正義で主人公が悪だった、という場合もあるし、そういう名作もたくさんあります。
何が正しくて何がいけないかは、主観によって様々に変わるのです。

この条例は基準が曖昧でどうとでも解釈できる危険なものです。さらに困ったことに、規制は役人のその場の気分次第というのが現状です。
そして、もし規制が厳しければ、担当さんはこう言うでしょう。

「この展開だと、都条例に引っかかる“かもしれない”から、変えませんか」

出版社というのは、皆さんの想像以上に自主規制が厳しいメディアです。
例えば、「ひとでなし」や「お百姓さん」なんて言葉も差別用語なので使えません。お百姓さんをどんなにリスペクトしていてもだめです。
私も、デビュー作で「土建屋さん」と書いたら直されました。関西では「土建屋よしゆき」というタレントさんもいるのですが、出版社はテレビ以上に規制が厳しいのです。
時には、過剰とも思える自主規制もあります。何か事件があれば、それに関して過剰に畏縮して規制することもあり、いくらなんでもそれは、と思うこともあります。
それでも、日本は諸外国に比べれば、とても自由に美しいもの、醜いもの、正しいもの、間違っているもの、曖昧なものを描ける、多様性を認める国なのです。

けれど、出版社も商売です。違う売り場に置かれたら売れるものも売れなくなってしまう。規制が厳しくなったら、確実に普通の売り場に置けるようなものを求めるでしょう。
もちろん、反骨心のある雑誌や作家もいるでしょう。でも、「こういう話が描きたいけど、出版社にだめと言われる“かもしれない”から、やめよう」という作家も多いでしょう。誰だって、たくさんの人に読んでもらいたいのです。

私が描きたかった『小煌女』も、もしかしたら描けなくなるかもしれません。

確かに、こんなの子供に読ませてはいけないというようなものが普通に売られているのはわけるべきでしょう。表現の自由だからなんでもかんでもOKにしろとは思いません。
でも、今回の法律は、実はそういうものではないのが恐ろしいのです。そして、それに気付いていない人達が多いのが苦しいし悲しいのです。

東京都だけがめちゃくちゃなんやん、出版社が大阪に来てくれたらいいのに、なーんて思いますが、実際問題、そんなに簡単にすべてのシステムが迅速に移るなんてことできませんよね。
なので、これは東京都だけの問題ではないのです。


たとえ可決しても、都民の有権者20万人の署名で撤回は可能です。
どうか、皆さんが関心を持ち、誤解を解き、働きかけ(都民の知り合いの1人もいませんか?)、この条例が施行される事態になりませんように。

見せたくないものが、見せたくない人達から遠ざけられますように。
そして、美しいものも醜悪なものも、決して現実にあってはならないような恐ろしいことも、表現する上では許される世の中でありますように。
posted by ウミノ at 12:47| Comment(7) | ご挨拶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

海野つなみダイレクト

こちらは、ネタバレは見たくないけどコメントは書きたいという方のための記事です。
別の記事にコメントしたいけどネタバレは見たくない、という方は、ここのコメント欄を使って下さいね。
posted by ウミノ at 12:45| Comment(30) | 海野つなみダイレクト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『小煌女』第18話「「聞きたまえ 聞きたまえ/Hark Hark」+『くまえもん』Vol.11

現在発売中のKiss24号に、『小煌女』第18話が掲載中です。
今回で3巻分が終了です。謎も一つ解明したし、やっと役者がそろったって感じでしょうか。
次回は2号あいて、来年1/25発売のKiss3号に掲載予定です。3巻も2月に発売予定ですので、日にちが決定したら、また改めてお知らせします。
あと、今日からコメント欄はネタバレ解禁にしますので、単行本派でネタバレは読みたくないという方は見ないようにして下さいね。
せっかく月2で描いているので、私だって感想が聞きたくて仕方がないのです。実は。
ネタバレは見たくないけどコメントは書きたいという方のためには、コメント用の記事を一つ作りますので、そちらをご利用下さい。

そして、デジキスで『くまえもん』Vol.11も配信中です。
最新作以外にも、デジキス1周年感謝企画・バックナンバー祭り第1弾ということで、本日12/10〜1/9までの期間限定で『くまえもん』のバックナンバーがすべて読めます。
まあ、読んでも「ふ〜ん」ぐらいの感想しか出ないと思いますが、それでもよければお楽しみいただけると嬉しいです。ぬるいなりに、自分的にこだわったぬるさなので。
もちろん、ぬるさの感覚は人それぞれだということもわかってますよ。

そしてここでお詫びを・・・。

『くまえもん』、1回じゃなく3回ほど休みます!

すみません! もう、本当に描く時間がなくなってしまって・・・! 丸一日の休みというのはゼロでずっと働いてるのですが、本誌の原稿にどんどん時間をくうようになってしまって、どうやってもくまえもんを描く時間が捻出できないのです。
楽しみにして下さってる方には申し訳ないのですが、ご理解いただければ恐縮です。
今のところ、目覚ましなしで寝れそうなのは元旦(実家に帰るから)だけですよ・・・。

それにしても、サブタイトル欄に書くことが多過ぎて、しかもデザインによっては文字が薄くて読めなかったりして、デザイン変えるの苦労しました。
とりあえず、しばらくはこれで・・・。
posted by ウミノ at 12:41| Comment(4) | 雑誌掲載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする